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タイトルの「64」が何を指すのか、読む前に説明できる人は多くない。ここから先、本作の結末には触れずに書く。取り上げるのは、公式に発表された刊行情報とAmazonの評価データ、そして選ぶ前の判断材料になる周辺情報だけに絞った。すでに読み終えている方は、気になる見出しだけつまんでもらってかまわない。
三上という広報官が、なぜ両方から追われるのか
主人公の三上義信は、刑事畑を長く歩いてきたのに、突然の異動で広報官に回された警官だ。広報室は、事件を追う刑事部と、記事を書く記者クラブの両方から突き上げられる場所にある。赴任早々、三上は「匿名報道」をめぐって記者クラブと衝突し、同時に警務部からも探りを入れられる立場に置かれる。
物語の背景には、昭和64年(=タイトルの「64」)に起きた、時効が目前に迫るある誘拐事件がある。刑事部と警務部、それぞれの思惑が交差する。その中で三上は、自分がどちら側の人間なのかを何度も問い直すことになる。これが、この作品を読む前に知っておきたい発見の1つ目だ。昭和が終わる直前、わずか7日間だけ存在した「昭和64年」に起きた事件だから、この題名になっている。
刊行から数字で見る『64』という作品
『64』は、2012年10月に単行本として刊行され、2015年2月に文春文庫として上下巻に分けて文庫化された。文庫版の上巻は368ページ・704円(税込)と、文藝春秋の公式ページに記載がある(文藝春秋・書籍ページ)。刊行された年、この作品は年間のミステリーランキングを二つ制している。文藝春秋の公式ページにも「二〇一二年のミステリー二冠!」と記載がある(文藝春秋・書籍ページ)。厚さに身構えなくても、その年のミステリーとしては最上位の評価を受けた作品である。
| 巻 | 刊行(文庫) | ページ数 | 定価 |
|---|---|---|---|
| 上巻 | 2015年2月 | 368ページ | 704円 |
| 下巻 | 2015年2月 | 432ページ | 880円 |
下巻は432ページ・880円(税込)と、こちらも文藝春秋の公式ページに記載がある(文藝春秋・書籍ページ)。
本格ミステリではなく、組織小説として読む
犯人当てのトリックを積み上げる「本格ミステリ」寄りの作品と、組織の中の人間関係を丁寧に描く作品とでは、読み口がはっきり違う。この作品は明確に後者だ。刑事部と広報室、記者クラブと警察という、立場の異なる集団同士のせめぎ合いが、物語を前へ進める力になっている。謎解きのカタルシスを求めて開くと、想像していたテンポとは違うかもしれない。組織の中で誰の言葉を信じるかで揺れる話として読むと、厚さが気にならなくなる。
Audible版の評価は、上下巻でどう違うか
Audible版のページを2026年8月30日に確認した。上巻は評価件数1,272件・5つ星のうち4.0。下巻は評価件数1,696件・5つ星のうち4.1だった。下巻のほうが評価件数・評価とも上回っているのは、上巻の途中で離脱した読者が多いようには見えない材料でもある。星の内訳までは確認できなかった。
向く人、向かない人
向く人:組織の中で板挟みになった経験がある人。犯人探しより、立場の違う人間同士がどうすれ違うかを読みたい人。上下巻という長さを、時間をかけて読み進めたい人にも向く。
向かない人:警察組織の内部描写や、記者クラブとのやり取りを丁寧に追う筋立ては、テンポの速い展開を求める人には冗長に感じられることがある。手がかりを積み上げて犯人を絞り込む過程を楽しみたい読者には、この作品の重心は少しずれている。
耳で聴くなら、加藤将之の朗読で上下合わせて24時間35分

Audibleストアで確認したところ、『64』には朗読版があり、ナレーターは加藤将之、制作はAudible Studios。上巻の再生時間は11時間23分、下巻は13時間12分で、上下合わせると24時間35分になる(2026年8月30日確認)。368ページの上巻を最初から読み切る自信がない人でも、通勤や家事の時間に流しておけば、2〜3週間ほどで聴き終えられる計算になる。無料体験の期間や解約手順は、キャンペーンで変わることがあるので、申し込み前に公式の案内を確かめてほしい。音の特性からオーディオ機器を選びたい場合は、周波数特性を解説した記事も参考になる(振幅特性とオーディオ機器選びの解説)。
紙で読みたい人へ。上下巻セットなので、読み終えてすぐ下巻に移れる。
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Kindle合本版。購入した直後から、上下まとめて読み始められる。
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前回どこまで読んだか、思い出すのに疲れませんか
テレビも映画も、音量を気にした瞬間に楽しめなくなります。
『64』のように気になったまま止まっている一冊があるなら、そこから戻せます。イヤホンなら誰も起こしません。深夜の1時間が、そのまま自分の時間になります。
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映像化は、NHKのドラマと東宝の劇場版、2つの形がある

2015年4月18日から5月16日まで、NHK土曜ドラマ枠で全5話が放送され、ピエール瀧が三上義信を演じた(Wikipedia・64(ロクヨン))。続けて2016年、瀬々敬久監督・東宝配給で映画版が公開された。主演は佐藤浩市で、前編・後編の2部作構成になっている。同じ原作でも、5話に分けたテレビドラマと、前後編2本にまとめた映画とでは、描かれる細部の密度が変わる。原作をどこまで詳しく映像で確かめたいかで、選ぶ形を変えるとよさそうだ。
こんな時間に、この本が効く
『64』が刺さるかどうかは、上下巻という長さとどう付き合えるかで変わる。近いものから選んでほしい。
50代・書類仕事で目が疲れやすくなった
上下巻あわせて800ページ。文字を追うのがしんどい日でも、朗読なら最後まで進める。
30代・電車の中でしか読書の時間が取れない
往復2時間の通勤なら、上巻11時間23分・下巻13時間12分を2〜3週間ほどで聴き切れる。
40代・在宅ワークの合間に耳を使いたい
パソコン作業をしている間に、警察内部のやり取りをじっくり聴き進められる。
20代・分厚い本はつい積読になる
厚い上下巻を最初から読み切る自信がなくても、朗読なら寝る前の15分から始められる。
60代・退職後の時間を長編にあてたい
D県警シリーズや横山秀夫の他の代表作まで、時間をかけて読み広げたい人に向く。
『64』を読み終えたら、次はどこへ
この後どこへ読み広げるかは、著者の他の代表作、円盤で観る映像化、他の警察小説の書き手、そして耳で聴き続ける選択肢の4方向で考えるとよさそうだ。
横山秀夫の代表作をたどる
D県警を離れた作品にも、組織の中で板挟みになる人物がくり返し出てくる。まずはここから広げたい。
自首した元警察官の「空白の2日間」を、警察・検察・弁護士・裁判官・記者などが順に語る代表作。組織の力学がもっと知りたい人へ。
新聞社が舞台の代表作。記者という別の職業の板挟みを読みたい人へ。
指名手配のイラストを描く警察職員が主人公。地味な仕事の重みを描いた1冊。
D県警シリーズ第1作・松本清張賞受賞作。本作の前段にあたる世界を知りたい人へ。
時効間近の事件を追う代表作の一つ。組織でなく個人の執念を描く1冊。
表題作ほか、警察小説の短編に触れたい人へ。1話ずつ読み切れる。
映像で確かめるなら
2015年のNHKドラマは全5話、2016年の劇場版は前後編。ここではまず、全5話をそのまま追えるNHK版の円盤を挙げる。
ピエール瀧・木村佳乃らが出演するNHKドラマ版のDVD。原作に忠実な運びを映像で確かめたい人向け。
刑事小説というジャンルへ視野を広げるなら
同じ警察小説でも、作家が違えば組織の描き方も主人公の立ち位置もまったく変わる。
今野敏の代表作。キャリア官僚が主人公という、本作とは逆の立ち位置。
シリーズ2作目。1冊で終わらせず、続きを追いたい人向け。
シリーズ3作目。刊行順を飛ばさずに読み進めたい人向け。
シリーズ4作目。長く続くシリーズものを読みたい人向け。
大沢在昌の代表作、新装版第1作。組織より個人の刑事像を読みたい人へ。
佐々木譲の代表作、上下合本版。三代にわたる警察官一家という縦の物語。
誉田哲也の代表作。姫川玲子という別の刑事像を読みたい人へ。
続きも、耳で聴けるかどうか
本作を耳で聴けたように、周辺の作品にも朗読版が揃っている。聴く読書を続けたい人向けに並べた。
半落ちのAudible版。同じ著者の代表作を、続けて耳で聴きたい人へ。
隠蔽捜査のAudible版。キャリア官僚の物語を耳で聴き比べたい人へ。
新宿鮫のAudible版。別の刑事小説シリーズを聴き始めたい人へ。
陰の季節のAudible版。D県警シリーズの前段を耳で聴きたい人へ。
社会派ミステリーへ手を広げるなら
組織や社会の重さを引きずるタイプの作品が好きなら、作家を変えても近い読み口に出会える。
湊かなえの代表作。学校という別の組織で起きる話。
宮部みゆきの代表作。追う側の視点で読む長編。
東野圭吾の代表作。犯人側の視点から読む倒叙ミステリー。
上下巻・24時間35分を聴き切るための道具
上下合わせて24時間35分という長さを、無理なく聴き切るための道具を絞った。
耳を塞がずに聴きたい人へ。長時間つけても耳が痛くなりにくい。
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文庫本の上下巻を並べて開いておきたい人へ。クランプ式で角度も変えられる。
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寝る前に少しだけ読み進めたい人へ。家族を起こさず手元だけ照らせる。
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耳をふさがないオープンイヤー型。家事や在宅で、まわりの音を聞きながら聴きたい人へ。
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栞の位置が、この半年ほど動いていませんか
筋を知っている本は、目で追うと退屈になります。読む力の問題ではありません。
朗読なら、知っている話でも声の演出で新しく聴こえます。同じ本を二度楽しむ、いちばん手軽なやり方です。
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この本の周辺を歩く
よくある質問
Q1. 『64』は上下巻どちらから読めばいいですか
A1. 上巻からです。上巻だけで368ページあり、単体でも読みごたえがあります(文藝春秋・書籍ページ)。
Q2. タイトルの「64」にはどんな意味がありますか
A2. 昭和が終わる直前、7日間だけ存在した「昭和64年」に起きたある事件を指しています。事件そのものの詳しい中身には、ここでは触れません。
Q3. 朗読版(Audible)は上下巻ともにありますか
A3. どちらもあります。ナレーターは加藤将之で、上巻11時間23分・下巻13時間12分、合わせて24時間35分です(2026年8月確認)。
Q4. NHKドラマと映画、映像はどちらを先に観るべきですか
A4. 決まった順番はありません。原作の細部まで追いたいなら全5話のNHKドラマ、2本でまとめて観たいなら前後編の映画版のほうが向いています。
Q5. 犯人当てを楽しむ本格ミステリですか
A5. トリックの謎解きよりも、組織の中で板挟みになる人物の姿を描く比重が大きい作品です。カタルシスの大きい謎解きを期待して手に取ると、印象が変わるかもしれません。











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