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気になる作家はいる。でも、その1冊のために2,000円と読み終えるまでの数日を使うのは重い。そう思っているうちに、候補は増える一方で、結局どれも読み始めない——そんな経験はないだろうか。
オーディブル 知らない作家という視点で見ると、この迷いを軽くする使い方がある。文庫を買わずに、1冊だけ声で試す方法だ。合わなければそこでやめればいい。気に入れば、同じ作家の別の1冊へ、もう少し深く進める。この記事では、その2段階の選び方を、実在する作品を挙げながら整理する。
こんな人に向いています
- 気になる作家は何人もいるが、どれから読むか決めきれない人
- 文庫を買って外れたときの後悔を先に減らしたい人
- 移動時間や家事の時間を、作家選びのお試しに変えたい人
すでに好きな作家が決まっていて、その人の未読作を順に読み進めたい人には、この記事の前半は関係が薄いかもしれない。後半の「もう1冊深く」からのほうが役に立つはずだ。
読んだことのない作家に、なぜ手が伸びないのか
理由は単純で、失敗したくないからだ。文体が合わなければ、最後まで読み切れない。読み切れなければ、使った時間もお金も戻らない。だから候補のまま止まる。
この不安を軽くする方法は、実は単純だ。1冊を最初から最後まで読むより先に、その作家の声を数分だけ聴いてみればいい。文体の癖、会話のテンポ、間の取り方——それらは最初の数分でだいたい伝わる。読み切る前に、合う・合わないの見当がつく。

まず1冊だけ試すと、判断がその場で終わる
試す1冊は、短くて代表的な作品を選ぶとよい。長編よりも、その作家の入口として名前が挙がることが多い1冊のほうが、数分のサンプルでも作風がつかみやすい。
たとえば村上春樹なら、デビュー作『風の歌を聴け』に続く『1973年のピンボール』が入口として挙げられることが多い(Audibleで確認できるのはこちら)。1980年に講談社から刊行された、鼠三部作の2作目にあたる1冊だ(Wikipedia・1973年のピンボール)。短い会話と、間を持たせる文体の癖が、最初の数ページで分かる。西尾維新なら、忘却探偵シリーズの1作目にあたる『掟上今日子の備忘録』。2014年に講談社から刊行された、シリーズの起点にあたる1冊だ(Wikipedia・掟上今日子の備忘録)。「1日で記憶が消える探偵」という設定だけで、最後まで飽きずに聴き通せる長さにまとまっている。
誉田哲也なら、警察小説シリーズの始まりにあたる『ストロベリーナイト』。道尾秀介なら、後述する『カラスの親指』。湊かなえなら、デビュー作『告白』。宮部みゆきなら代表作の一つ『火車』。いずれも、その作家を語るときに真っ先に名前が挙がる1冊だ。迷ったら、まずこの並びから選べば外れにくい。
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移動しながらでも、声なら試せる
文庫を開くには、座って手を空ける時間が要る。声で聴くだけなら、電車の中でも、皿を洗いながらでも試せる。この「試す場所を選ばない」ことが、耳で読むいちばんの利点だ。通勤の行き帰りだけで、1冊の入口を確かめられる。
家電を選ぶときの基準と同じで、道具は仕組みが分かっていたほうが失敗しにくい。耳をふさがずに聴ける機器の仕組みは、ワイヤレス家電の仕組みにまとめてある。移動しながら試す前に、目を通しておくと選びやすい。
短編集なら、1話で見切りをつけられる
長編に踏み込む前に、もっと短く済ませたいこともある。そういうときは、その作家の短編集を選ぶとよい。1話が短く完結しているぶん、1話読み終えた(聴き終えた)時点で、続けるかどうかを決められる。
村上春樹の『一人称単数』、西尾維新の『短物語』、伊坂幸太郎の『逆ソクラテス』はいずれも短編集だ。村上春樹には『走ることについて語るときに僕の語ること』というエッセイもあり、小説とは違う素の文体を確かめたい人に向く。道尾秀介の『鬼の跫音』も短編集で、長編の『カラスの親指』とは違う、後味の重い短編の書き口が分かる。どれも1話で判断できるので、通勤の片道だけで作風を確かめられる。
気に入った作家は、もう1冊だけ深く聴く
1冊目で合うと分かったら、次は同じ作家の別作品へ進む。ここで選ぶのは、入口の1冊より少し長い、あるいは評価の高い代表作にするとよい。1冊目で慣れた文体のまま、もう少し重い読み口を試せる。
村上春樹なら『ノルウェイの森 上』、西尾維新なら〈物語〉シリーズの『化物語 上』、伊坂幸太郎なら『[第1弾] グラスホッパー』、道尾秀介なら『N』、誉田哲也なら姫川玲子シリーズの、番外編を除く本編5作目『ブルーマーダー』、宮部みゆきなら『名もなき毒』。1冊目が短編や入門作だった分、2冊目は少し骨のある作品を選ぶと、その作家をより深く知れる。
よくある質問
Q1. 試した1冊が合わなかったら、どうすればいいですか
A1. その作家を諦める必要はない。作品ごとに文体の雰囲気は変わるので、別の作品で改めて試す価値はある。ただし、無理に読み進める必要はない。合わない1冊は途中でやめてよい。
Q2. 短編集と長編、どちらから試すべきですか
A2. 時間が取りづらいなら短編集、じっくり試したいなら長編の入口作、という分け方でよい。正解はなく、自分の生活時間に合わせて選べばいい。
Q3. 聴き放題の対象作品は、どうやって見分けますか
A3. 申し込み画面や商品ページで、対象かどうかは都度変わる。試す前に、最新の対象範囲を画面で確認してほしい。
こんな読み方をしている人に
1冊だけ試す、という読み方には、いくつかの入り口がある。近いものを探してみてほしい。
20代・気になる作家が多すぎて選べない
候補は5人いるのに、どれも読み始めていない。1冊だけ声で試せるなら、通勤の行き帰りで決められそうだと思っている。
30代・外れた文庫を最後まで読めなかった経験がある
以前、評判だけで買った文庫が合わず、途中で読むのをやめた。次は同じ失敗を避けたい。
40代・短編集から作風を確かめたい
長編に手を出す前に、まず短編集で書き口を知りたい。1話で見切りがつくなら気が楽だ。
50代・同じ作家の2冊目を選びかねている
1冊読んで気に入ったが、次にどれを読めばいいか迷っている。代表作の一覧がほしい。
60代・寝る前に1冊ずつ試している
布団に入ってから、知らない作家の作品を少しずつ聴いている。合わなければそのまま眠ってしまってもいい気楽さがいい。
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耳で読む話の続き
1冊だけ試すなら|作家別カタログ
ここまでに挙げた作家を、試す1冊・短編集・2冊目に分けて並べ直した。同じ並びで迷ったときに使ってほしい。
読んだことのない作家は、まず1冊だけ試す
その作家を語るときに真っ先に名前が挙がる、代表的な入口の1冊を並べた。
村上春樹の初期作、鼠三部作の2作目。短く、会話の間の取り方だけでこの作家の呼吸がつかめる。
西尾維新の忘却探偵シリーズ1作目。「1日で記憶が消える探偵」という設定だけで最後まで聴き通せる。
誉田哲也の警察小説シリーズの始まりの1冊。刑事ものを試すなら、まずここから。
道尾秀介の代表作。詐欺師たちの共同生活を描く、この記事でも書評を書いた1冊。
湊かなえのデビュー作。担任教師の告白から始まる、社会派ミステリーの入口。
宮部みゆきの代表作の一つ。追う側の視点で読む長編の重さを、まず1冊で確かめられる。
短編集・エッセイで、先に作風だけ確かめる
1話・1章が短く完結しているので、聴き終えた時点で続けるかどうかを決められる。
村上春樹の短編集。長編に進む前に、まず1話で文体を確かめたい人に。
村上春樹のエッセイ。小説とは違う、素の文体を試したい人に。
西尾維新の短編集。長編シリーズに入る前の、軽い1冊として。
伊坂幸太郎の短編集。1話読み切ったところで、自分に合うか判断できる。
道尾秀介の短編集。『カラスの親指』とは違う、後味の重い短編の書き口が分かる。
気に入った作家は、まずもう1冊深く聴く
1冊目で作風に慣れたら、少し骨のある代表作へ進む。同じ作家の別の顔が見える。
村上春樹の代表作の上巻。短編で慣れたあと、長編の呼吸を試したい人に。
西尾維新の代表作〈物語〉シリーズの1作目。忘却探偵とは違う語り口を試したい人へ。
伊坂幸太郎の代表シリーズ第1弾。短編で気に入ったら、長編の構成も試したい人に。
道尾秀介の単行本。『カラスの親指』の後に読む、もう一段重い代表作。
誉田哲也の姫川玲子シリーズ、番外編を除く本編5作目。入口の1冊から、シリーズの中盤へ進みたい人に。
宮部みゆきの杉村三郎シリーズ2作目。『火車』の後に読みたい、もう一つの代表作。
試している間だけ、身の回りを少し変える道具
1冊を試している数日だけ、耳と手元を軽くする道具を絞った。
耳をふさがないオープンイヤー型。移動しながら試すときに、周りの音も聞き取れる。
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クリップ式の読書灯。試した1冊を紙でも読み返したくなったときに、寝る前でも使える。
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卓上の書見台。次に深く読む2冊目を、紙で開いたまま手を空けて読みたい人に。
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気になる作家が何人いても、一度に全部読む必要はない。まず1冊、声で試す。それだけで、次にどの本へ手を伸ばすかがはっきりする。




















