
『女の一生』はモーパッサンの小説だが、1967年に日本で映画になったとき、舞台はフランスから日本へ移された。
公式のあらすじは「昭和21年の春、日本アルプスの麓の旧家」から始まる。主人公も日本人の女性だ。
原作を読もうとして映画の情報を見ると、話が噛み合わなくて戸惑う。その理由はここにある。
脚本には、のちに『男はつらいよ』を撮る山田洋次が入っている。
この記事はPR・広告を含みます。結末には触れません。
女の一生の原作は、モーパッサンの小説
原作はフランスの作家モーパッサンが書いた長編小説だ。
新潮社の公式ページによると、新潮文庫版は新庄嘉章の訳で480ページ。整理番号は モ-1-1。棚に並ぶときの番号で、新潮文庫のモーパッサン作品の1番という意味だ。
同じページの著者紹介には、モーパッサンがフローベールに師事したこと、1880年の『脂肪の塊』で作家としての地位を確立したことが書かれている。
長編は6作、中短編は300余。『女の一生』はその長編のうちの1作だ。
1967年の映画は、舞台を日本に移している
ここが、原作から入る人にいちばん伝わっていない点だ。
松竹シネマクラシックスの公式ページに、この映画の原作・脚本・キャストが載っている。原作欄はモーパッサンだ。
| 項目 | 公式の記載 |
|---|---|
| 公開日 | 1967年11月11日 |
| 本編尺 | 119分 |
| 原作 | (ギ・ド・)モーパッサン |
| 脚本 | 野村芳太郎/山田洋次/森﨑東 |
| 監督 | 野村芳太郎 |
| 撮影 | 川又昂 |
| 音楽 | 林光 |
| 受賞 | 1967年度キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞(岩下志麻) |
公式のあらすじは、こう始まる。昭和21年の春、日本アルプスの麓にある旧家の一人娘・伸子が、療養生活を終えて家に帰ってくる。
父、母、そして女中で乳姉妹のお民が伸子を迎える。初夏に、伸子は戦死した兄の学友と知り合い、結婚して婿養子に迎える。
公式のページから読み取れる、原作との違いはこうなる。
- 舞台はフランスではなく、日本アルプスの麓
- 時代は昭和21年の春から始まる
- 主人公は旧家の一人娘・伸子(岩下志麻)
- 公式の解説には「家に縛られ」という言葉がある
入れ物は日本に置き換わっているが、家に縛られる娘という筋立てはそのまま残っている。
脚本に山田洋次が入っている
公式の脚本欄は、野村芳太郎・山田洋次・森﨑東の3人だ。
山田洋次が『男はつらいよ』の第1作を撮るのは1969年。この映画は、その2年前にあたる。
当時の松竹で、脚本を3人で書いていたことが公式の記載から分かる。

キャストは岩下志麻、宇野重吉、左幸子、長岡輝子、田村正和、栗塚旭、竹脇無我、小川真由美。岩下志麻はこの年のキネマ旬報ベスト・テンで主演女優賞を受けている。
公式の解説は、岩下志麻が女学生から四十代の母親までを演じ分ける、と書いている。1本の映画で、1人の女性の時間が丸ごと流れる。
そして、家に縛られ、夫や息子に痛めつけられる女性の姿を描いた作品だ、とも書かれている。原作の題がそのまま日本の家の話になっている。
原作をいま読むなら
文庫で手に入る訳が複数ある。新潮文庫は新庄嘉章の訳、光文社古典新訳文庫は永田千奈の訳だ。公式ページに訳者名と発売日が載っている。
どちらから読んでも話は分かる。訳が違うと文の呼吸が変わるので、読み比べる人もいる。
同じ「海外の小説が日本語で何度も訳される」という形は、他の作家でも起きている。その一例がシャーロック・ホームズ 読む順番|新潮文庫だけにある10冊目と版の違いで、こちらは版によって収録作そのものが動く。
いま読んでいる話で、すぐ試せるもの
映画を観るなら
DVDが出ている。松竹ストアの公式ページに品番 DA-0973、尺数119分、1967年11月11日劇場公開作品と書かれている。
画面サイズは16:9のシネマスコープ、音声は日本語のモノラル、字幕は無し。公式の商品情報にそう記載がある。
昔の映画は、暗い場面が長く続くことがある。画面の映り込みでその暗さが潰れるかどうかは、家電の反射率とは?映り込み・グレアで後悔しない選び方の基準で決まる。
1960年代の映像が、いまの画面でどう見えるかは写真画質の基礎知識:XGA解像度とは?の考え方で見当が付く。
この監督は原作のある映画を撮り続けた人で、1970年の『影の車』は公式ページの原作欄に松本清張「潜在光景」より、と書かれている。
同じ野村芳太郎が横溝正史を映画にしたのが1977年の『八つ墓村』で、そちらは八つ墓村の原作はどこから読むか|1977年版と2026年版の違いにまとめた。
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映像で観た作品を、もう一度たどりたくなることがあります
観たあとに原作へ戻ると、削られた場面が見えてきます。ただ、そこで文字を追う気力が続かない。
朗読なら、観たときの記憶をなぞるように進めます。知っている話なので、途中で止めても筋を見失いません。
合わなければ、期間内にやめられます。
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使い始めてから、あると助かるもの
よくある質問
Q1. 女の一生の原作は誰が書いた小説ですか
フランスの作家モーパッサンです。新潮文庫は新庄嘉章の訳で480ページあります。
Q2. 1967年の映画は原作どおりの舞台ですか
違います。公式のあらすじは「昭和21年の春、日本アルプスの麓の旧家」から始まります。
Q3. 映画の脚本は誰が書きましたか
野村芳太郎、山田洋次、森﨑東の3人です。松竹の公式ページにそう記載があります。
Q4. 上映時間はどれくらいですか
本編尺は119分です。松竹ストアの商品情報にも同じ119分と書かれています。
Q5. 原作と映画、どちらから触れるのがいいですか
どちらでもかまいません。舞台が入れ替わっているので、先に映画を観ても原作の筋が分からなくなることはありません。
Q6. 書名で探すと別の本が出てきます
『女の一生』という書名は他にもあります。探すときは、著者がモーパッサンかどうかを確かめてください。
どこから入るかは、時間の取り方で決まる
長編を1冊読むか、短編で試すか、耳で聴くか、先に映画を観るか。入口は4つある。
先に映画を観たい人
1967年の映画は119分。舞台が日本なので、原作を知らなくても入れる。
長編を1冊読み切りたい人
新潮文庫は480ページ。腰を据えて読む1冊になる。
移動中に少しずつ読む人
短編集なら1編が短い。降りる駅で止めても続きを覚えていなくていい。
夕方は目が疲れる人
短編の朗読がある。長編は見つからなかった。
『女の一生』を、原作と映画の両側からそろえる
原作はフランスの長編、映画は戦後の日本が舞台。どちらから入っても構わない。
原作を読む
文庫で手に入る訳が複数ある。どちらから読んでも話は分かるので、文の呼吸で選んでいい。
紙の文庫。新庄嘉章の訳で480ページ。棚に置いて読む1冊
電子書籍版。新庄嘉章の訳。すぐ読み始めたい人へ
電子書籍版。永田千奈の訳。すぐ読み始めたい人へ
紙の文庫。永田千奈の訳。棚に置いて読む人はこちら
モーパッサンの短編から入る
長編が重いと感じたら短編から。新潮社の紹介によれば、この人は中短編を300余も書いている。
紙の文庫。新潮社の紹介で「作家としての地位を確立した」と書かれている1編が入っている
紙の文庫。1編が短いので、途中でやめても引きずらない
紙の文庫。一を読み終えたら、そのまま番号を追える
紙の文庫。三冊そろえると短編の幅が見える
耳で聴ける短編
通勤中に聴いて進めたい人もいる。2026年9月の時点で見つかったのは、短編の朗読だった。
短い1編。モーパッサンの語り口を耳で試せる
さらに短い1編。移動時間が短い日に
手記の形をとった1編。読み口が長編とは違う
映画を観る
1967年の映画はDVDになっている。松竹ストアの公式ページに品番と尺数が載っている。
岩下志麻が主演した映画版。松竹のDVD
脚本に入っていた山田洋次をたどる
この映画の2年後に『男はつらいよ』の第1作が始まる。同じ書き手が、次に何を作ったかを見られる。
1969年の第1作。この映画の2年後に始まったシリーズの出発点
シリーズ第17作。第1作を観たあと、もう1本だけ選ぶなら
50年後に作られた1本。同じ監督が同じ人物を撮っている
50作をまとめて。1本あたりで見ると単品より安く収まる
同じ時代のフランス小説
同じ19世紀フランスの長編を並べてみる。読み比べると、この作家の書き方の位置が見えてくる。
ゾラの長編。同じ時代のパリの暮らしを書いている
同じくゾラ。居酒屋を読み終えたら次はこちら
ユゴーの長編。19世紀フランスをまとめて読みたい人へ
デュマの長編。読み終えるまで時間をかけたい人へ
同じ監督が撮った、原作のある映画
野村芳太郎は原作のある映画を撮り続けた人だ。原作の側から入ると、映画の見え方が変わる。
電子書籍版。1977年に同じ監督が映画にした横溝正史の長編
1970年の映画『影の車』の原作。公式の原作欄にこの題が載っている
1970年の映画と同じ題の1冊。松本清張の短編がまとまっている
ここまで読んだ方が、次に選んでいるもの
まとめ|原作はフランス、映画は戦後の日本
『女の一生』の原作はモーパッサンの長編小説だ。
1967年の映画は、その骨組みを昭和21年の日本へ移している。本編尺は119分、脚本は3人がかりで書かれた。
同じ監督が横溝正史を映画にした作品の原作は金田一耕助シリーズの順番|全22冊の違いと、映画から入る3冊の1番にあたる。







































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